- 投稿日
- 2018年12月18日
- 更新日
パワハラでうつになったら障害者手帳をもらえる?
上司のパワハラを受け強い不安や恐怖感を感じるようになり日常生活に支障をきたしている。病院で診てもらったらうつ病と診断され休職を繰り返している。このように精神障害のために日常生活が制限されるようであれば障害者手帳の交付を受け様々な優遇措置を受けながら治療に専念することができるかもしれません。
障害者手帳とはどういう制度か
障害者手帳とは、身体・知的・精神に障害を抱える方が各種の優遇措置を受けるため行政より交付されるものです。ここでは、精神障害保健福祉手帳(以下「精神障害者手帳」といいます)についてその概要をお伝えします。精神障害者手帳は、精神障害と診断されたら自動的に交付されるものではなく、交付を希望する方の申請が必要になります。
障害者手帳の対象者
ポイントになるのは、診断後すぐに交付申請できるわけではなく精神障害と診断された日から半年以上過ぎていることです。いわゆる「症状固定」された状態である事が必要です。ある病名で診断されたら交付されるといいうより、原則として日常生活に支障をきたすかどうかという心身の状態や程度で判断されます。
障害者手帳の等級
精神障害者手帳の等級は、1~3級まで設定され、等級に応じて受けられる優遇措置の限度額やサービスが異なります。年齢や性別、入院しているかどうか、在宅で生活しているかの区別なく精神障害者手帳が交付されるかどうか、またその等級について都道府県単位の審査会によって決定されます。申請の窓口となるのは、各市町村役場の障害福祉課になります。
障害年金と障害者手帳の違いはあるの?
幼少期から障害を抱えていて障害行政に慣れている方や行政窓口の公務員の方以外は、あまり違いを認識していないのではないでしょうか。パワハラを受けうつ病になって初めて障害者手帳や障害年金という制度を見聞きするようになったという方も少なくないと思います。
まず、障害年金と障害者手帳を混同されている方がいますが、二つの制度は全く別の制度であるという事です。精神障害者手帳は都道府県単位で決定がされ、各種の優遇措置が受けられるようになります。等級も精神障害の場合はどちらも1~3級に区分されていますが、同じ等級を指しているわけではありません。また、精神障害者手帳は基本的に優遇されるというだけで、障害年金と違い給付を得られるというわけではありません。
精神障害者手帳を受けるメリット
では、障害者手帳を獲得すると具体的にどのような優遇措置を得られるのでしょうか。以下に1級で受けられる優遇措置や福祉サービスを列挙(一部)します。1級から3級の等級により控除額が異なったり、等級の違いにより受けられない項目がありますので、申請される際には市役所の窓口で確認するようにしてください。
・所得税の障害者控除(本人または家族が対象)
・所得税の配偶者控除・扶養控除の同居特別障害者加算(同居家族が対象)
・350万円以下の預貯金等の利子所得の非課税(マル優制度)
・市・県民税の障害者控除(本人又は家族が対象)
・相続税の障害者控除
・贈与税の非課税
・自動車税・自動車取得税の減免(障害者本人又は生計同一者が取得・所有する車で障害者の通院等のために生計同一者が運転する場合)
・軽自動車税の減免
【福祉サービス】
・重度障害者医療費助成制度
・後期高齢者医療制度の利用(65歳から対象)
・生活保護の障害者加算
・福祉タクシー利用券(在宅の方)
・タクシー運賃の1割引
・市心身障害児福祉手当
・自動車運転免許取得費用の助成
・就職支度金の給付(就職し6ヶ月以上雇用見込み者)
【公共料金の割引等】
・県営水道料金の減免
・駐車禁止除外指定者の指定
・携帯電話基本使用料の割引
・電話番号案内
・県営住宅への入居当選率の優遇
・公共・文化施設の利用料の割引
・NHK放送受信料の減免
これだけの優遇措置を受けられるんですね。パワハラによって日常生活に支障をきたすまで追い込まれてしまった方が障害者手帳の優遇措置を活用することで経済的な負担を減らすことが可能になります。行政サービスは、原則申請主義ですから知らなければ申請することもできません。知っているのと知らないのでは大きな違いになります。
精神障害者手帳を受けるデメリット
障害者手帳を獲得することのデメリットは、「障害者手帳を所持している」というレッテルを自分で貼ってしまうことによる気持ちの側面です。精神障害と診断されたけれど自分は障害者ではないと考えている方にとっては、障害者手帳の交付を受けることはかなりの抵抗があると思われます。
また、これらの優遇措置を一度受けてしまうと、「今までの生活基準」から「優遇措置を受けている生活基準」が通常になってしまう事で、障害者手帳を所持しなくなっても問題なくなったときに以前の生活基準に戻ることに対して損をした気になってしまうことです。人は得をすることより損をしたくないと考える生き物ですので、逆に社会復帰が遅れてしまう事につながりかねません。
精神の障害者手帳は、身体・知的障害と違い障害者手帳に2年ごとの更新があります。つまり申請手続を2年ごとに行う必要がありますので、診断書を取得する費用、申請書を書いて窓口で申請する手間が生じます。診断書は5千から1万円程度になりますが、保険適用されませんので全額自己負担になります。
精神障害者手帳の申請方法と必要書類
手続については、それほど難しくはありませんが、申請書類に必要事項を記入し手続市役所の障害福祉課に提出してください。
・診断書(診断書は、精神障害者保健福祉手帳用と自立支援医療診断書用の2種類がありますが、両制度を同時に申請する場合は精神障害者保健福祉手帳用を使用します。)
・印鑑(認め印でOK)
・本人の顔写真(縦4㎝×横3㎝)
・マイナンバーカード
※障害年金を受給されている方は、診断書の提出に変えて精神障害を事由とした年金証書の写し、年金の給付状況を確認するための本人同意書が必要
精神障害者手帳の更新
更新の手続は、障害者手帳の有効期限(2年間)の3か月前から可能で更新申請に必要な書類は、上記の必要書類に加え、障害者手帳を持参します。
まとめ
・パワハラで精神障害と診断され半年以上経過していれば、障害者手帳の交付を受けることができる。
・精神障害者手帳は1~3級まであり様々な優遇措置を受けることができる。
・精神障害者手帳の有効期間は2年間。2年ごとに更新の必要がある。
・障害年金受給者の場合は、年金証書の写しを診断書の代わりに提出することができる。