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労災だけでは全然足りない!?パワハラ上司に慰謝料請求できるのか?


労災でカバーできない損害は慰謝料請求できる

パワハラ上司のせいでうつ病を患った。労災は当然だとして慰謝料は請求できないものだろうか。と考えるのもおかしな話ではありません。パワハラによる精神的苦痛は思ったよりも根深くその影響は計り知れないものがあります。

労災保険法に基づく保険給付は、労災認定に一定の基準を設けることで公平な制度設計がされていますが、慰謝料の給付は対象とされていません。日本では労働基準法84条2項を反対解釈として捉えることで、労災ではカバーされない損害について民法による不法行為に基づく損害賠償請求を行う事を認めています。

労基法84条2項
使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。

パワハラ被害を訴える場合は、まず会社の上司の上司であったり、会社の人事部になります。その場合は、自分とパワハラ上司だけの問題だけではなく、会社もそのパワハラ問題に対応してこなかったという事についてその責任を追及していくことになります。

八戸自衛隊車両整備工場事件(最高裁判決昭和50年2月25日)において最高裁が認めた事案で、いわゆる国(使用者)が安全配慮義務を負う事に言及した事件です。また労災認定とは違い、訴訟においては、パワハラ上司や会社の責任を追及する一方、労働者側にも過失がなかったかどうかという事も問われますので、より正確な証拠資料が必要になること言うまでもありません。

直接的な暴力を振るわれたという事であれば、パワハラをした上司に対し刑事責任を問える可能性もあります。暴行罪や傷害罪等が認められれば、懲役や罰金刑に処せられます。刑事上の責任が問えないにしても民事上の慰謝料や損害賠償請求、会社に対しては使用者(会社)責任の追及も行えます。具体的に訴訟を考えている場合は、初回無料の弁護士相談などを利用されるなどして自分の方向性を見定めるようにした方がいいでしょう。

パワハラ訴訟は本当のところ現実的なのか?

私も実際にパワハラを受けた身として感じたことは、気持ちの整理ができずこの気持ちを何とかしたいという理由で訴えたいという事でした。ただ、第三者に相談をすることで冷静に事の次第を判断できるようになってきました。訴訟となると、時間もお金もかかります。

弁護士に相談をする時間、証拠書類を集める時間、訴訟を進めるための事務手続きなどを弁護士に任せた場合に費やされる時間やそれに伴う費用を100万円程度と見積もりました。最終的に得られる慰謝料の相場は、調べたところ数十万円から100万円程度であることを考えると、コストパフォーマンスは必ずしもいいとは言えないという事がわかりました。

裁判では数千万円以上の逸失利益を認めたケースも判例ではありましたが、それもごく一部のケースですし自分のケースには当てはまらないですから、現実的には働く環境を変えるという選択肢の方がはるかに建設的です。パワハラをした相手を許すことはできませんが、私自身も反省すべき点があり、反省すべき点は改善し、この経験を活かし成長することが相手を見返すことになると思っています。こういう割り切りができるようになったのは、やはり一人で考え込まずに家族に相談することができたことで冷静になれたからです。

もちろん、相手方を訴えずにはいられないという方は、迷わず弁護士に相談をしていただき訴訟手続きを取って頂きたいと思います。訴訟に限らずパワハラを受けていることを相談する際は、必ず事の次第や経緯を記録し、水掛け論にならないように証拠固めをしておくことが最も重要です。まずは記録する癖をつけるようにして、時系列で整理するという習慣をつけてみましょう。

【パワハラでうつ病に】退職した場合の給付はどうなる?

パワハラで退職したら労災の給付も止められちゃうの?と心配される方もいるかもしれません。退職して社会保険の被保険者資格が変更されることになった場合、医療保険であれば健康保険から国民健康保険あるいは健康保険の被扶養者になります。労災に関する給付は、その支給要件を満たしている限りにおいて継続して受け取ることが可能です。その支給要件とは、「業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため労働することができないため、賃金を受けていない場合」になります。

社会保険の切り替え手続については、会社から資格喪失届を受け取って役所手続きができれば比較的スムーズですが、それがなくても多少時間はかかりますが役所から問い合わせがなされることで切り替えができるようになります。

パワハラで退職した場合の雇用保険

雇用保険の基本手当は、失業している事、離職の日以前1年間に雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上あることを要件に原則支給されますので、この要件を満たすかどうかをまずは確認します。失業というのは、働く意思や能力があるにも関わらず職業に就くことができない状態を指しますから、うつ病などで労働することができないという場合は、失業に該当しないという事に注意が必要です。

ここで重要なのは、自己都合退職か会社都合退職かという点です。この点に関してはこちらの記事をご確認ください。この違いによって給付日数、支給開始の時期や期間にも差が出てきます。まず、自己都合の場合は離職票の提出や求職の申し込みをハロワでしてから7日間の待機期間と3か月の給付制限がありますから4か月近く手当がもらえないという事になります。一方、会社都合の場合は3か月の給付制限がありませんから、7日間の待機期間後、所定の手続きを経たのちに支給されることになります。

また、基本手当の給付日数にも違いがあります。会社都合の場合は、最長で330日となりますが自己都合の場合は150日です。ほぼ半分の期間ですね。パワハラで退職を余儀なくされる方は、会社からの離職票に自己都合退職という表記があっても、あきらめずに会社都合である特定受給資格者となれるようにパワハラの事実を積み上げるとよいかもしれません。

また、当時の病状としてうつ病やてんかん、統合失調症と診断された場合、自己都合退職扱いであっても3か月の給付制限が免除されますのでハローワークでその旨をご連絡して頂き、「病状証明書」をもらい、医師に病状を証明してもらう事で可能になります。

ここでポイントになるのは、「3退職時の病状」についてです。雇用保険の基本手当は失業の状態ですぐに働ける方ですが、退職時の病状として就労継続は「不可能」と判断されている場合に該当しているかどうかをハロワでは見ているようです。

すぐに働くことができない方は早めに受給期間延長手続きを取る

雇用保険の支給開始は、離職の日の翌日から1年間を限度として所定の給付日数を限度に支払われることになります。受給期間が過ぎてしまうと給付日数が残っていても支給されないことになっていますから注意が必要です。延長の手続きを取ることで1年間の受給期間を最長3年間延長することができますので早めに受給期間延長手続きを取りましょう。

まとめ

・慰謝料請求は可能だが訴訟をすることは金銭的負担、時間がかかること、精神的な負担となるので弁護士相談などを通してよく見極めること。

・社会保険の切り替え手続きや雇用保険の手続は早めに行い、情報収集しつつも自分のケースにどう動くのがベストなのかは直接確認すること。

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